7月5日(土)に『新幹線大爆破』(1975.07.05)の劇場公開からちょうど50年となることを記念した特別上映ベントが開催。『新幹線大爆破』公開50周年記念日特別上映イベントに登壇したのは、Netflix映画『新幹線大爆破(2025)』の監督を務めた樋口真嗣と同作出演者の一人でもあるフリーアナウンサーの笠井信輔。記念日にふさわしいノンストップトークが炸裂しました!

【オフィシャルレポート】
当日、本編上映開始前には樋口真嗣と笠井信輔が前説を行なった。樋口は、公開当時、宣伝用に制作された『新幹線大爆破』の“のぼり”を手に登壇。出だしから“『新幹線大爆破』愛”の溢れるトークは止まらず、少し時間をおして上映開始となった。
上映終了後、満席の客席から再度拍手で迎えられた樋口と笠井。ちょうど50年前の1975年7月5日に本作が公開したことに触れて樋口は、「小学四年生だったが、50年前の今日、初日に学校をサボって小遣いを握りしめて行きました。ランドセルを隠して、もぎりの前でこう…」と、身振りを交えながら当時のスリリングな状況を再現。笠井もその告白に驚いた様子だったが、樋口は「いざ映画を観たら高倉健さん(沖田役)も山本圭さん(古賀役)も犯人役で、悪いことをした人たちが劇中で亡くなっていく。学校をサボった自分に置き換えて怖くなった」と当時を振り返って観客を笑わせた。

そんな樋口が語る本作の魅力には、「3つのレイヤー」があるという。「新幹線に関わる人々」、「事件を解決に導こうとする警察」、そして「犯人サイド」。公開当時小学四年生だった自分が、高倉健さんの当時の年齢に追いつき、追い越してしまったことが衝撃だったと話した。
さらに樋口は、作品のリアリティを支えた特撮技術について熱弁を振るった。樋口曰く、「ミニチュアの出来が本当に良い!」。その他にも本作は驚くべき創意工夫で数々の名シーンを生み出している。「浜松駅前のシーンは、ミニチュアと写真の切り抜きを組み合わせて作られているんです」と明かし、さらに東京駅での緊迫したシーンも、実は東映の撮影所内に作られたオープンセットだったことに触れ、「ある意味、この映画の全てのカットが特撮と言える」と語った。
また、本作の特殊撮影が、のちにウルトラマンや怪獣のデザインを手掛ける成田亨氏が担当していたことにも触れ、「『トラック野郎』も実は大特撮映画なんですよ」と、東映特撮のDNAが様々な作品に受け継がれていることを力説。公開当時『新幹線大爆破』の上映前に『トラック野郎』の予告がついていたそうで、樋口は「やべえ!新幹線の次はトラックだ!と興奮したのを覚えています」と話して観客の笑いを誘った。

話は、樋口監督が手掛けて今年Netflixにて配信開始となった同名作品にも及ぶ。樋口は、「Netflix版を観た人には、ぜひこの映画(東映版)を観てほしいという思いがありました。実際にNetflix版でも、東映版で宇津井健さんが演じた倉持運転指令長が双眼鏡を覗くシーンや、商社マンが錯乱するシーンをどうしてもやりたかったんですよね」と語る。さらには、「公開当時東映版は、鉄道ファンの間で否定的な声も多かったが、自分の好きな映画をずっと事あるごとに伝え続けて、今回のNetflix版につながったと思う」とさらなる“『新幹線大爆破』愛”を語った。
Netflix版のクライマックスシーン撮影前には、樋口は主演の草彅剛と2時間以上にわたって語り明かしたという。「人を殺すか殺さないか、という話に対してどれだけリアリティを持てるか。自分の死生観はノストラダムスの大予言から来ている、なんて話までしました」と振り返る。その熱量が草彅に伝わり、緊迫のシーンは一発OKで撮り終えたという。奇しくもイベント当日となった2025年7月5日は、インターネット上などで「天変地異が起きるのでは」と話題になった日。樋口は「ついに、25年遅れで俺の何か、俺の待ち望んだ時が来るのかもしれないと。今日皆さんとそんな日に出会えてよかった」と笑った。

最後に樋口は、閉館する丸の内TOEIについて「映画館は記憶を作り出す場所。この映画館には、他にはない味があったと思います。それも含めて、ここで観られた楽しみ。この楽しい思い出を持って帰って、いつまでも記憶の中でこの映画館を可愛がっていただけたら。僕も、皆さんと気持ちは一緒です」とコメント。
『新幹線大爆破』が50年の時をこえて観客の心に新たな記憶を刻んだこのイベントは、色褪せることのない映画への愛があふれるメモリアルなものとなった。
